この記事を簡単に言うと
D.カーネギーの突破力 [ D.カーネギー協会 ]という本のまとめ。

・仕事や日常生活で悩みが絶えない人はに、本書はぜひおすすめ。



D.カーネギーの突破力 [ D.カーネギー協会 ]という本を読み終わったので、印象に残った部分を中心にまとめていきたいと思います。
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悩みを減らす10の助言

以下、本書から引用しながらまとめたいと思います。

1 人のことを口出しをしない
たいていの人が他人のことに口出しして、厄介事を自分でつくりだしている。
口出しするのは、自分のやり方が最良だとなぜか信じているからで、考え方の違う人には言って聞かせて自分と同じ正しい方向へ導いてやらなければならないと思うからだ。

人間は勝手なものだ。
自分は常に正しいと思い、その「正しい道」に他人を立たせるのは自分の務めだと思っている。
人は人、自分は自分と考えて、求められたときだけアドバイスすれば、悩みはずっと少なくなる。

2 恨みをもたない
侮辱されたり傷つけられたりした相手を恨むのは自然なことだ。
それでも前進したければ、忘れるすべを身につけることが必要だ。
人生はつまらないことに消費するにはあまりに短い。
忘れる、そして前に進むのだ。

3 自分を信じる
手柄を認めてもらえないのは不愉快だ。
しかし、上司や同僚がほめてくれることは滅多に、いや、実は決してないのかもしれない。
利己的な動機がない限り、他人を褒めない人間がとても多い事を覚えておこう。

批判はすかさずするが、手柄に対しては知らん顔だ。
そして、私たちは人からどう思われるかを気にしすぎる傾向がある。
自分の能力と長所を心から信じていれば、人からどういう態度をしめされようとあまり悩まずに済む。

4 嫉妬しない
嫉妬だどれほど心の平和を乱すものか知らない人はいないだろう。
同僚よりよく働いているのに向こうは昇進し、こちらは取り残される。
同じ商売をしているのに競争相手の方がなぜか儲かる。
自分より新しくて高価な自動車を持っている隣人がしゃくにさわる。

嫉妬しても問題は解決しない。
悩みと心の乱れを招くだけである。
人を妬まず、自分が持っているものを受け入れて、それを向上させる努力をするべきだ。

5 変化を恐れない
変化はいやおうなくやってくる。
変化なしでは進歩もない。
それでも変化を嫌がる人は多い。
慣れ親しんだ居場所を失うからだ。
変化を余儀なくされたときは、悪く作用することを心配せず、それによって良くなる面に注目しよう。

6 避けられないものは受け入れる
マザーグースの歌を1つ拝借しよう。
王様の馬と王様の家来をみんなで呼び集めても、過去を元には戻せない。
変えられないことはきっぱりと忘れる。
そして持てる力をかき集め、きっとやり遂げられるという姿勢を呼び戻して、巻き返しに乗り出すのだ。

7 多くを引き受け過ぎない
実行できないほど多くの事や多くの責任を引き受けてしまうのは、たいていは自尊心を満足させたいせいか、人から高く評価されたいからだ。
私たちは自分の限界を認識する必要がある。
特別な仕事を引き受けてほしいと頼まれても、すでに手いっぱいなら如才なく、丁寧に断る。

8 頭をいっぱいにしておく
頭の中がポジティブな思考でいっぱいになっていないと、そこに悩みが割って入る。
たいては取るに足りないことや、起こりそうにもないことについての悩みだ。

頭の中は前向きな明るい考えや、考える価値のあることで満たしておかなければならない。
すぐれた本を読む、いい音楽を聴く、瞑想する、価値ある地域活動や楽しい趣味に没頭する。
ただ人生の喜びや恵みについて考えるだけでもいい。
そうしたことが頭の中の悩みを締め出してくれる。

9 嫌いな仕事を先にする
どんな仕事にも、また生活のどんな側面にも、嫌いだけれどもやらなければならないことがある。
そういう仕事はたいてい後回しにし、好きなものから手をつけるのが普通だ。

だが、嫌いな仕事もいつかはやらなければならない。
これは自分で自分の首をしめる行動だ。
人の心理のつねとして、嫌いな仕事を後回しにして好きなことをやっていると、その好きなことさえ楽しめなくなる。

嫌な仕事を最初に片づけてしまえば、あとは楽しい事が待ってるだけだ。

10 失敗から学ぶ
失敗は誰でもする。
あらゆることを完璧にやってのけられる人はどこにもいない。
前進したければリスクを負わなければならず、そのリスクは要するに「失敗するかもしれない」ということだ。

リスクを負うと言っても、それは向こう見ずになれということではない。
成功する人は決断のたびにリスクを負うが、そのリスクは入念な分析とプランによって限界まで小さくされている。
だが、ゼロにはならない。
痛みがなければ儲けもないのだ。

失敗してしまったら、くよくよしたり塞ぎ込んだりせずに、原因を念入りに調べ、可能ならやり直す。
たとえやり直しがきかなくても、将来同じ過ちを繰り返さないように何が問題だったのかを分析し、他にとりうる道を探しておくことが重要だ。

悩みを最小限にする3つの方法

悩みを最小限にする方法①
いつまでもぐずぐずと考えるのはやめる
一度真剣に考えたら、そこで見切りをつけてきっぱり決断する
悩みのほとんどは、優柔不断から生じている
決断したら、その方針を貫く

悩みを最小限にする方法②
考えていたつもりが、いつのまにかただ悩むだけになっていないか気をつける
考えるのと悩むのは違うということを忘れてはいけない
明晰な思考が建設的であるのに対し、悩むのは破壊的である

悩みを最小限にする方法③
悩みのネタとなっている問題を解決できる方法があれば、それを実行する
もう同じ悩みを抱えなくても済むように、できることを全てやる
以上、悩みを最小限にする方法3つについて、カーネギー氏はこうまとめています。

まず自分に問いなさい。
起こりうる最悪の事態は何か?
そして、最悪の事態を受け入れる覚悟をする。
それから、その最悪の自体が少しでもよくなるような努力をする。


今日というこの1日だけを生きる

明日に備える最良の方法とは、ありったけの知性とありったけの情熱を傾けて、今日の仕事に今日取り組むこと。
それが未来に備えられる唯一の方法です。

では過去と未来の扉を閉ざす方法はどのようなものがあるか。
D.カーネギー氏は、次のように自問し、その答えを書くことを提案しています。
1 先のことを悩んだり、「水平線のかなたの魔法のバラ園」にあこがれたりして、今この時を生きるのを怠っていないか?

2 済んだことやしでかしたことなど過去のことをくよくよして、今の時まで苦しいものにしていないか?

3 朝起きた時、今日というこの日を逃すまいと、すなわちこの24時間を最大限に活用としようと決心しているか?

4 「今日というこの1日だけを生きる」ことで、人生をもっと豊かにできないか?

5 この生き方をいつから始めるのか?来週からか、明日からか、それとも今日からか?
昔からこう言われる。
「過去のことは済んだこと。私達には変えられない。未来のことは分からない。だから今日という日は贈り物。だからプレゼント(今の時)と呼ばれる」

忍耐力で悩みを突破する

成功者と呼ばれる人々の重要な共通点の1つは、いつでも成功してきたわけではないということだ。
彼らはたとえ失敗しても、不運や力不足を嘆くかわりにたちまち立ち直り、それまでの2倍も3倍も努力することで失敗や障害を乗り越えている。

彼らは回復力がある。
ストレスや悩みを自分で解消できる、いわば感情的知能指数が高い人だ。

また、彼らに必ずあるのが忍耐力だ。
どんな困難にみまわれても必ず成功してみせるという不屈の意志だ。
状況がどれだけ悪かろうが、どんな妨害に遭おうが、どれほど落胆させられようが彼らは投げ出さない。
悩んだり後悔することにエネルギーを浪費せず、ゴールを目指してより賢く、懸命に奮闘する。

大きなことを成し遂げる人の全てが、こうした忍耐力を備えている。
彼らにとって何かの能力に欠けることもあれば、弱点や変わった癖など色々抱えていることもある。
だた、簡単にあきらめることだけは決してしない。

ねばり強く目標を持ち続けることには他人を動かす力がある。
人から信頼されるからだ。

だから粘り強い人間が行動を起こせば、その戦いは買ったも同然だ。
その人だけでなく、仲間のすべてが勝つと信じているのだから。

忍耐力のある人間はうまくいってようがいってまいが気にかけない。
何事も全力で取り組むだけだ。
それが最も効率のいいやり方になる。


■忍耐力で悩みを突破する まとめ

人生とは今日のことだ。

今日だけが当てになる唯一の人生だ。

だから今日を精一杯生きることだ。

何かにわくわくするほど興味を持とう。

自分を揺さぶり目覚めさせよう。

好きなことに没頭しよう。


迷わない値打ち

まず何をするか決断する。
決断したら、何があっても実行する。
どちらを先にするかをいつまでも迷っていたり、決断を先送りしていたら、どちらも実行できない。

何の迷いもなく自らすべてを仕事にささげられる人間は、必ず何かを成し遂げる。
もし、才能も良識も兼ね備えているなら、大成功間違いなしだ。

世の中で失敗する大きな理由の一つは、投げ出すのが早すぎるということだ。

コロラド州のある鉱山主が、金が出るらしい山を掘り始めた。
だが10万ドルを投じ、1年半かかって1.5km掘り進んでも、ついに金は発見されず断念する。
ところが、その坑道を買い取った別の会社が、そこからほんの1m掘り進めると、なんと金の鉱脈に行き当たったのである。

私達の人生の鉱脈も、ほんの1m先に眠っているかもしれないのだ。

投げ出したくなった人のために

それでも投げ出したくなったら、次の詩を読むといい。

何もかもうまくいかないことがある、誰でも時々はそうなるように。
とぼとぼ歩む道は、見たところどこまでも上り坂。

蓄えは乏しく、借金は重く。
微笑みたくても出るのはため息ばかり。

心配事に押しつぶされそうな気がする時は、必要なら一休みすればいい。
だが、投げ出してはいけない。

人生は見通しがきかない曲がりくねった道、誰でも時々は思い知るように。
もう少し辛抱していたら、失敗せずに済んだとわかるのは、いつも後から。

だから歩みがどれほど鈍く思われようと、投げ出してはいけない。
もうあと一息で、勝利するかもしれないのだから。

成功は失敗の裏返し、銀色に輝く黒雲の裏側。
ほんの隣り合わせにあることが、私達には見えないだけ。

はるか遠くに見えようとも、思いのほか近いかもしれない。
だからどんなに打ちのめされても、踏みとどまって闘うのだ。

どん底に見えるときこそ、投げ出してはいけない。



ちっぽけな悩みや取るにたらない心配事ほど心の平和な大敵はいない。
私達から安らぎと幸福と強さを奪っていくのは、勇気を奮って立ち向かわなければならないような大きな苦難ではなく、日常のちょっとしたストレスやほんの小さな気がかりなのだ。
不機嫌な男女がしじゅう小言を言ったりいがみ合ったりしていれば、多くの家庭の平和と不幸が台無しになるだろう。

人生の生活における最も嘆かわしいエネルギーの無駄は、取り越し苦労や先々の心配をしたがる悪い癖から発生する。
そういう不安や心配はまず的中しない。
なぜなら、そういうものは決まってただの想像上のもので、何の根拠もないからだ。

ささいなことで騒がない

「今週末、雨が降らないかととても心配です。雨だとピクニックが中止になってしまうから」

「今度のダンスパーティーにドレスの仕立てが間に合うかどうか、やきもきしています」

「お父さんがもし今晩、車を使わせてくれなかったら困るなぁ」

本人にとってこうした事柄はもちろん重要なことだろう。
それでもこれくらいのことで悩んでいるほど人生は長くない。
これらの心配がもし的中したとしても、それほど大した不都合ではないはずだ。

心配するより行動する

ジェレミーはここ数年きちんと健康診断を受けておらず、医者に行くのが怖かった。
行けば心臓が悪いとはっきりと言われそうだったからだ。
彼の妻は、そんなふうな心配事を抱えて悶々としていること自体が、実際に心臓発作の危険を招くことを知っていた。

彼を病院へ引っ張っていき、信頼できる専門医のもので徹底的な検査を受けさせた。
その検査の結果、心臓は今のところ全く問題ないことが保証された。
彼の不安は払しょくされたのである。
それだけではなく、医師から長く健康に生きられるような摂生法も指導され、普段の生活習慣も大きく改善された。

避けられないことは共存する

大手百貨店チェーンの創業者J・C・ペニーはこう答えている。
「たとえ一文なしになったって悩んだりはしないだろう。悩んでも何の得にもならないからね。できることを精いっぱいやるが、あとは神様が決めることだ。」

自動車王ヘンリー・フォードはこう言った。
「手の打ちようがない時は、ただなりゆきに任せる」

クライスラー社の社長K・T・ケラーはこう言った。
「苦境に立たされた時は、できることがあればそれをやる。なければ、もう考えない。私は先のことを悩んだりしない。だって未来に何が起きるかなんて誰にも分らないんだから。」

悩みを「損切り」する

株式売買のプロであるトレーダーは、損失を最小限にするテクニック(ロスカット)を持っている。
これを心配事に応用してみよう。

1つの方法は、問題に時間制限を設けることだ。
D.カーネギーは、悩みを抱えたら自分に次のような質問をすることをすすめている。

・この悩みは私にとって、本当にそれほど重要な問題だろうか?

・この悩みに対して「ストップ・ロス・オーダー」をどの時点に設定し、あとは忘れるべきか

・この問題は正確なところ、どれだけ悩む価値のあることだろうか?
私はすでにその価値に見合わないほどなやんでいるのではないか?


セルフトークで悩みを乗り越える

効果的なセルフトークを作るには、まず自分の長所や特性、手柄や業績をすべて数え上げて「自分財産」を作ることだ。
悩みを撃退するには自分を受け入れること。
そして評価できるのが肝心なのだ。

■自分を受け入れる
自分を受け入れるには、真の自己が受け入れられて、自分の肯定的な面、すなわち素質や長所など自分という人間を構成する優れた特質に目が行くことが必要だ。
自己イメージのそういう肯定的側面に注目できると、自信も自己評価も高くなる。

自分の短所にしか目が行かない人があまりにも多い。
肯定的な自己像に自分の目を向けて、ひいては他人にも目を向けさせる。
それが悩みを乗り越える第一歩だ。

■自分を評価する
自己評価を高めるカギは、これまでの功績や業績に注目すること、そして素晴らしいことを成し遂げた自分を見直すことだ。
これまでに手にした数々の成功をじっくり繰り返せば、見方が変わり自信がつく。

この2つを合わせれば、裏付けのある強力な激励の言葉、セルフトークができる。
自分を信じ続けるには、誰もが時々しなければならない内なる討論だ。
あるいは、思考という、常に自らが最高の支配者たりうる唯一のものに対して、支配力を取り戻す道具である。

最大の悩みはお金の悩み

最大の悩みのタネは何かと質問すると、必ず上位に入るのがお金にまつわるものだ。
クレジットカードや自動車ローン、住宅ローンあるいは個人的な借金の返済が滞りなくできるかどうかが心配だという人は大勢いるし、家賃や医療費の支払いに時々困るという人も、日々の必需品を買うのすら大変だという人もいる。

こうした悩みは世の中の経済が悪化して、レイオフが増えたり労働時間が短縮されたりすると、ますます深刻になる。
しかし、悩むだけでは何の解決にもならない。
中には借金がかさんで二進も三進もいかなくなり、破産といった荒療治しか抜け出す道はなくなるという人もいるが、たいていの人はそんなことだけにはなりたくないと奮闘している。

次にあげるのは、資産管理の専門家に聞いた「賢くお金を使う10の方法」だ。

1 支出パターンを分析する
2 予算を立てる
3 クレジットカードを賢く使う
4 分割払いをできるだけ減らす
5 いざという時のために、貸付を受ける道を確保しておく

6 保険に入って災難に備える
7 まず「自分」に備える
8 投資には保守的になる
9 幸運をあてにしない
10 他人と暮らしぶりを張り合ったりしない


(※ 各項目の詳しい解説は、本書D.カーネギーの突破力 [ D.カーネギー協会 ]を参照)



たいていの人は個人的な悩みの他に職場関連の悩みを抱えている。
上司のこと、人事考課のこと、ノルマのこと、時には解雇やレイオフの心配もしなければならない。
ではそういう悩みをどうやって解消するか、少なくともどうやって軽減するかについて考えていこう。

他人を責める前に自分を見つめよ

自らの仕事ぶりや人間性が批判を浴びるのを待っていないで、先手を打とうではないか。
自分で自分のとびきり厳しい批判者になるといい。
あらゆる弱点を見つけて改善しよう。
敵に一言も言わせないように。

科学者は実験の結果や新発見を発表する前に、何度も何度も確認する。
念入りに調べ直し、何度やっても同じ結果が出ることを確かめる。
彼らの仕事の完璧さも、この自らを評価する姿勢のたまものだ。

批判を歓迎する

たいていの人は批判を歓迎しないし、苦労して決めたことを変えたがらない。
そのうち風向きが変わることに望みをかけるだろう。
批判されるとたちまち防衛的になって、相手の言葉に耳を貸さない人も多い。
批判されると誰でも恨みがましい気持ちになり、褒められれば喜んで鵜呑みにする。
その批判やほめ言葉が正当であろうがなかろうが。

人間は理論的な生き物ではない。
感情の生き物だ。

誰かに悪く言われたのが分かっても、自分を弁護するのはやめておこう。
その新しい見解に広い心で謙虚に耳を傾けることだ。
そして「私の失敗をすべて知っていたら、そんな手ぬるい批判ではすまないでしょう」と言って批判者をへこませ、ついでに拍手をもらうといい。

D.カーネギーは、批判されても悩まずに済む方法を次のようにまとめている。

・不当な批判は、ほめ言葉の裏返しのことがある。それは嫉妬され、羨まれていることだ。死んだ犬を蹴とばす者はいないということを覚えておこう。

・最善を尽くす。その後はいつもの傘をさして、非難の雨が首筋から流れ込むのを防げばいい。

・日頃から自分の愚行の記録をつけておき、自己批判する。私達はとうてい完璧にはなれないのだ。だから偏見のない、役立つ建設的な批判は歓迎しようではないか。

職場での疲労・心労を予防する

肉体労働が求められる職場では、身体が疲労を教えてくれる。
そうなったら休憩を取り、身体が休まったら仕事に戻ればいい。

だが昨今、体力を消耗するような職場は多くない。
求められるのはもっぱら頭脳労働だ。

身体は疲労の信号を出さなくなった。
代わりに思考速度が落ち、仕事の出来が悪くなる。

私達に必要なのは、これを未然に防ぐ方法だ。

・疲れないうちに休む
・仕事をしながらリラックスする方法を見つける


次に、「職場での疲労・心労を予防する4つの優れた習慣」を紹介しよう。

1.デスクの書類を片付ける
2.仕事に優先順位をつける
3.問題はなるべくその場で解決する

4.任せることを学ぶ

(※ 各項目の詳しい解説は、本書D.カーネギーの突破力 [ D.カーネギー協会 ]を参照)

職場内の対立はなぜ起きるのか

多くの人が抱える職場の悩みの一つは、同僚とうまくいかないことだ。
対立を生産的な形で解消するスキルは難しいが学びがいのあるものとしてよく取り上げられる。

職場内の対立のほとんどは、次の要因のどれか、またはいくつかと結びついている。
頭文字を取れば「P・R・I・D・E」(プライド)となる。

Process(手続き) 組織内で普段仕事がどんな流れで処理されていくか

Pole(役割) 誰がどんな仕事をするか

Interpersonal(人間関係) 組織内の多様な人間同士の相性や付き合い方

Direction(指示) SOP(標準作業手順書)を含めた指示のあり方

External(外部的要因) 時間や資金など、組織に大きな影響を与える外部事情


Process(手続き)
同じチームのメンバー同士で対立が起きた時は、そのチームの監督者が解決しなければならない。
他のグループのメンバーと対立が生じた場合は、もっと複雑な解決の仕方が必要になってくる。

Pole(役割)
他人が割り振られるべき仕事が自分に回ってきたとか、やりたかったプロジェクトが他人に行ってしまったといった状況も多くの対立を発生させる。
こうした対立を避けるには、明瞭な職務記述書を作成し、従業員の十分な理解をはかることだ。

Interpersonal(人間関係)
組織やチームは、それぞれ独特の性格や才能、癖や仕事の流儀などを持った個人の集まりだ。
したがって仕事のやり方で意見が合わないことも当然多いが、さらに深刻なのは個人的な反目が生じることだ。

Direction(指示)
大きな組織には、たいてい日常的な業務の処理方法を明記したマニュアルがある。
標準作業手順書(SOP)と呼ばれるもので、その部署の従業員も監督者もそれに従うことで、日々の業務について決定や再決定を下す必要がなくなる。
こうした指示が明瞭で理解しやすければ、多くの対立を避けることができる。

External(外部的要因)
組織は、外の世界から切り離されて機能することはできない。
どれほどすぐれた組織でも、外部的な事情から内部的対立が起きて、解決が必要になることがある。
対立を招きがちな要因には、例えばテクノロジーの大きな変化や景気の低迷、労働争議、新しい法律や会社経営に影響する政策などがある。

対立を解決する

同僚との間に摩擦や対立が生じることは珍しくない。
解決への心得をいくつか挙げる。

・相手の立場でモノを見る。相手にはこの状況がどう見えるだろう?こちらの見方とちがうのだろうか?

・「あなたは…」ではなく「私は…」、「私たちは…」という言い方で話をする。

・価値観に違いがあるときは、必ず道徳的に優れている方に従う。

・うそやごまかしのない真剣な気持ちで取り組む。

・その要因に対して自分はどれだけの支配力を持っているのか、何をどう変えられるかを自問する。

・犠牲を払ってもその価値があると判断した時は、闘うことを選ぶ。

・「できない」ことを嘆かず、「できる」ことに全力を注ぐ。

・何か相手のためになることをする。

・全体像と目的を見失わない。

・信頼する人に相談する。



管理職には、職場内に対立が起きた時に、それを解決するという役目がある。
解決への手順を提案しておこう。

1 この件に対して自分はどれだけ支配力を持っているかを自問する。問題の根本的な原因をつきとめ、改善の見込みを分析する。

2 できるだけ多くの情報を入手し、問題を明瞭にする。当事者と話し合う。対立する両者の間で問題の捉え方がしばしば異なることに注意する。

3 当事者に、問題を解決する方法について提案を求める。双方が合意できる案を彼らとともに探す。

4 当事者同士が合意に至らない時は、実行可能な解決策と行動プランを提示する。提示した解決策の各段階について予定表を作り、進歩をチェックする。

5 問題が片付いたら、対処の仕方を振り返って分析するのが望ましい。自分はどれだけ有効に役割を果たせたのかを、当事者や他の参加者と対照して判断する。
そして、次のように自問する。

・当事者や他の参加者に、管理者として自分の役割を明確に伝えたか。

・この経験で、対立の解消における自分の役割への認識を新たにしたか。

・組織の目標を達成するためなら自分が柔軟な対応をいとわないことを、部下たちが理解し受け入れてくれたか。

・自分の個人的な偏見や先入観が、行動や判断にどれだけ影響したか。

6 自分は管理者として対立をどれだけ緩和できたかを当事者や他の参加者にたずねる。

7 どのような行動を改めれば部内の対立を減らせるかを考える。改善をはかったら、少なくとも3カ月間はその変化を見守る。

8 対立を減らす努力が、部内でどう受け取られているかに留意する。


失職の不安を解消する

職をうしなうかもしれないという不安は、おそらくもっとも深刻な悩みの1つだろう。
どんな仕事でも安全だという保証はない。
景気が悪くなれば、どれだけ優秀でどれだけ忠実な社員でも職を失う事がある。

しかし会社が永久に扉を閉ざすというのでない限り、例え大幅な人員削減をしても、相当な数の社員が残るはずだ。
人員削減をすり抜けて生き残り組に入るためにはどうすればいいのか?
人よりずっと価値のある存在になれば、生き残りのチャンスは増える。

・手際よく仕事をこなす

・新しいテクノロジーに通じる

・担当範囲を拡大する

・目立つ人間になる

・前向きな姿勢を持つ

・柔軟にかまえる

・場合によっては他の職を探す準備をする


(※ 各項目の詳しい解説は、本書D.カーネギーの突破力 [ D.カーネギー協会 ]を参照)

「原因」と「結果」の法則、“アレン”の影響を受けたデール・カーネギー

デール・カーネギーは、「新訳原因と結果の法則 (角川文庫) [ ジェームズ・アレン ]から大きな影響を受けた。

・人のあり方は、その思考によって形成される。
心に有害な考えがあれば、自分が苦しむことになるし、清らかな考えを持てば、喜びが訪れる。

・原因と結果は、思考という隠れた領域においても、目に見える物質世界と同様に確固として存在する。
優れた正確は、決して小手先で取り繕われたものではなく、たゆまぬ努力と正しい思考がもたらす当然の結果である。
それと同様に下劣な品格も、下劣な思考を長らく宿した結果である。

・人は自分自身によって造られることもあれば、壊されることもある。
何を考えるかで、自分を滅ぼす武器も作るし、喜びと力と平和に満ちた至福の城を築く道具もこしらえる。

・思考を正しく選択し、正しく働かせれば、成功と賞賛と幸福が手に入る。
思考の使い方を間違えれば失敗者となり、卑しく惨めな者となる。
この最高と最低の間にあらゆる等級の人物がいる。
私たちは自分自身のつくり手であり、主人なのだ。

・人生という闘いは、たいていは悪戦苦闘だ。
だが、苦労がなければ成功もないだろう。
手に入れようと奮闘するものがなければ、手に入るものもないのだから。
苦労は弱いものをおじつかせるかもしれないが、決意と勇気のある者にとっては、いい刺激にしかならない。
だいたいに人間の進歩とは、その大部分がたゆみない善行と、いつわりのない熱意と行動と忍耐と、そしてそれらの何にもまして、困難を乗り越え不運に決然と立ち向かう断固たる決意の賜物なのだ。

・成功への道は険しい上り坂で、頂上を目指す者の底力を試すだろう。
だが人は経験からたちまち学ぶ。
障害物は、それとがっぷり組み合うならば必ず克服されること、そして目的の達成に最も力あるものは、自分にはそれができる、必ず成し遂げられるという信念だということを。
すなわち苦労は、それを克服するという決意に出会うこと、しばしばひとりでに消えてなくなるのだ。


その仕事は不可能だと思ったら、負け。
そう思わない限り、決して敗北はない。

            -デール・カーネギー-


自分を信じる

成功へのカギは、第一に自分を信じることだ。
自分を高く評価できる人々は、たいていのことには成功すると心のどこかで信じている。
成功した男女のほとんどは、成功者となる遺伝子を持って生まれてきたのではない。
偉大な人々の物語からわかるのは、彼らの多くが貧困や失意や、絶望的な状況を乗り越え、ようやくにしてゴールに到達したということだ。
彼らは自己イメージをネガティブなものからポジティブなものへと変えた。
そして決意と骨身を惜しまず働くことで、自らの思い描いた成功を実現したのである。

このステップは誰でもたどることができる。
身も心も投じ、終わりのない努力をすることは必要だが、日の当たる場所へ登りたければ誰でも登ることができるし、実際そうするべきなのだ。

・自分を愛する。
自分を心から大事にし、尊重しないかぎり、他人の愛と敬意を期待することはできない。

・自分を信頼する。そしていさぎよく決断する。
目標を設定し、成功する自信があれば、達成につながる決断を恐れる必要はない。

・もっとポジティブになる。
もちろん途中で何度か失敗するだろう。
だが、くよくよせず、その日その日の目標を達成していくことに集中すれば、成功への野心がよみがえる。

・自己評価は滅びやすい。
絶えず栄養を与え、補強しなければならない。
栄養になるのは言葉、行動、心の姿勢、経験そしてそれを持続させようという自らの決心だ。

・自分に大それた要求をする。
ささやかな成功でいい気になってはいけない。
小さな成功を誘い水にして、さらに大きな成功を求めるべきだ。

・成功者を見習う。
偉大な人々の伝記を読み、彼らの経験から学び、そのひたむきさに心を奮い立たせて欲しい。
現代のヒーローを探して、その生き方を見習うのもいい。

・明るく前向きに考える。
心にネガティブな言葉が浮かんだら、ポジティブな言葉と取り替える癖をつける。
失望ではなく希望を、失敗ではなく成功を、敗北ではなく勝利を、恐れではなく励ましを、無気力ではなく情熱を、憎しみではなく愛を、自らへの高い評価を表す言葉を頭に浮かべる。


穏やかで、勇敢で、健全で、希望に満ちた考えで頭をいっぱいにしておこう。
なぜなら人生は、心に思い描いたとおりのものになるからだ。

                                -デール・カーネギー-



野心を育てる

野心ほど注意深く見張り、護り、養う必要が必要なものも他にないだろう。
野心は栄養を与えない限り成長もせず、生き延びもしない。
そして野心をおろそかにした瞬間から人は下り始める。
エネルギーが衰え出し、容姿も言葉も徐々に劣化する。
服装はだらしなくなり、仕事も行儀作法もぞんざいになり、やがてすっかりプライドを失って谷底へ転がり落ちていく。

野心がとりわけ失意のもとで、ぐらついたり萎えたりし始めたら、何としてでも立ち直らせ、力づけてやらなければならない。
野心を奮い立たせる唯一の方法は“星”に目を据えることだ。
こうなりたいと思う自分の姿をくっきりと描き出して、つねに心に揚げ、全力をあげてそれを目指すことだ。

毎朝、前日よりよく働く決心をしよう。
そしてあたかも勝利に向かって行進しているかのようにふるまい、私たちが野心に満ち、成功を約束されているという印象を周囲のすべてに与えるのだ。
身体、頭脳、道徳性のどれについても成功者にふさわしい水準を保たなければならない。
たとえわずかでも堕落や水準低下のきざしがないか、自分を安っぽくしたり卑しくしていないか油断なく見張る。
そうやって常に高い理想を揚げ、それに応えて生きるなら、野心は決して衰えない。

行動する

不運や失敗に人生を台無しにさせないと決心したら、何をするかを直ちに決める。
そして暗い気分を振り払って立ち上がり、すぐさま行動に移ることだ。

単に何かをしようという野心があるだけでは、例えどれだけ強い決意があっても、実際にそのプランや仕事に着手しない限り私たちは少しも強くなれない。
それどころかプランや決意がありながら実際の行動が伴わなかったら、むしろ弱くなるだろう。

それはジムへ行って運動器具をただ眺めていても、少しも強くなれないのと同じだ。
ランニングマシーンもエアロバイクもダンベルも、それを使って身体を動かしてこそ筋肉を鍛えることができる。
人格の筋肉を鍛え、決意を強め、野心を支えるのは、何事かを実際に行うというそのことだ。

馬から落ちたら、すぐ乗り直す

ビジネスであれ人生の他の面であれ、大きな失敗をして意気消沈し、すっかり自信を失うことがある。
そういうときは直ちに何らかの対策を取らないと、敗北意識や不幸感が根付いてしまうかもしれない。

昔からこう言われる。
「馬から落ちたら、すぐ乗り直せ。」
さもないと怖くて一生乗れなくなる。

敵に力を振るわせてはいけない

敵を憎むことは、その敵に力を振るわせることだ。
その憎しみを抱えたせいで夜は眠れなくなり、食欲は落ち、血圧は上がる。
憎しみをどれだけつのらせようが、敵は何の害も受けるわけではない。
なのに、こちらは昼も夜も悲惨なことになる。
復讐心に取り付かれると、敵より自分の方がよほど被害を受けるというわけだ。
敵は何一つ手を下していないのに、こちらは疲労困憊し、神経をすり減らし、健康を損ない、おそらくは命も縮めているだろう。
そうと知ったら、敵は小躍りして喜ぶに違いない。

敵を愛するようにできるような聖人になれとは言わない。
だが私たち自身と健康と幸福のために、憎しみを忘れようではないか。


人に仕返ししようなどと考えてはいけない。
そんなことをすれば、相手よりも自分の方がよほど傷つく。

                                -デール・カーネギー-



酸っぱいレモンをレモネードに変える

デール・カーネギーは、レモンを見事にレモネードに変えたフロリダ州の農夫のことを語っている。

農夫は、手に入れた土地を見てがっかりした。
岩だらけの荒地で、果樹を植えることも豚を飼うこともできない。
ヒイラギガシの茂みとガラガラヘビだけがはこびっている。
その時農夫は、こう考えた。
この悪条件をきっと財産に変えてみせる。
ガラガラヘビをうまく利用するにはどうしたらいいだろう。

誰もが驚いたことに、彼はガラガラヘビの肉で缶詰を作り始めた。
ヘビの皮は靴やハンドバックの材料として売り出し、牙から抽出した毒は、血清をつくる研究所に買い取らせた。
このビジネスが大当たり。
農場には見学者が詰め掛けるようになった。
彼の前向きな姿勢が、新しい産業を創出したのである。
酸っぱいレモンが、まさに甘いレモネードに変わった。

日々生きていく間には、すっかり気落ちして、レモンをレモネードに変える希望などどこにもないという思いもあることだろう。
それでも変える努力をすべきだという理由は2つある。

1つは成功するかもしれないから。
もう1つは、たとえ成功しなくても、マイナスをプラスに変えようとすれば、後ろを振り返らず前を見つめることになるからだ。
ネガティブな考えがポジティブに変わる。
エネルギーが湧いて、忙しく働くことへと駆り立てられ、過去のことや取り返しのつかないことを嘆いて悲しんでいたりしている暇も余裕もなくなる。



人は何を恐れるのか

いずれ死ぬことを思うと、死が恐ろしく、生きていること自体が怖くなるという人は大勢いる。
何か悪いことが起きそうだという不安に常に付きまとわれている人も多い。
そういう人たちは、いつも気が晴れず、何をしても楽しくないし、心からくつろげない。
恐れが人生に深く根付いているために、何をやっても中途半端で、こということをやり遂げることができない。

あらゆるものが怖いという人もいる。
お金をなくすのが怖いから仕事で冒険はしたくない。
世間の目が怖い。
隣近所からどう見られているかとても気になる…。
まさに怖いことだらけの人生である。

不安があるときは、やるべきことをとことんやる。
準備が完璧なら、怖いものはなくなる。

                  -デール・カーネギー-



恐れが「恐れていること」を呼び寄せる

恐れや悩みには、恐れているまさにそのことを呼び寄せる作用がある。
常に恐れや不安を抱えていれば健康は損なわれるし、寿命は縮むし、仕事の能率は上がらなくなる。
疑いと恐れは失敗に直結する。

何だか悪いことが起きそうだという予感は不安感は、職場でも他の場所でも、行動全てに影響する。
新しいことや大胆なこと、思い切ったことができなくなる。
その人らしさがなくなり、個性が消えて、あらゆる知的作業が輝きを失う。
恐れは常に人を弱らせ、臆病を居座らせる。

恐れは正常な頭の働きを止めてしまい。
いざというときに賢い行動が取れなくなる。
恐怖に身がすくむと頭のなかが真っ白になって、どうしていいか分らなくなるのは誰でも知っているだろう。
落胆し、お先真っ暗になった時や、失敗しそうだという不安で頭がいっぱいのとき、あるいは一文無しなるような不安に取り付かれたときなども、私たちは知らないうちに恐れているそのことを引き寄せている。
だからビジネスに幸運が寄り付かない。

信念が恐れを追い払う

不安や心配を跳ね除けて、いつも成功を心に描き、希望に満ちた楽天的な態度を決め込んで、計画性と経済観念と先見性をもってビジネスに打ち込むなら、実際には失敗はほとんどしないものだ。
だが臆病風に吹かれたり、疑心暗鬼に陥ったり、パニックを起こしたりすれば、平常心は失われ、成功に不可欠な努力ができなくなる。
気力、体力を奪われ、抵抗力が落ち、効率が悪くなり、恵まれた資質も台無しになる。

成功哲学のパイオニアの一人であるオリソン・マーデンはこう述べている。
「恐れは想像力と結託して大変な悪さをする。あらゆる災難を目の前に描き出してみせるのだから。信仰や固い信念は、その完璧な解毒剤だ。恐れは暗がりと影しか見せないが、信念は黒雲の銀色に輝く裏側とその上の太陽を見せてくれる。恐れは人をうつむかせ、最悪の事態を予測させるが、信念は空を仰がせて最良なものを期待させる。恐れは悲観論者で、つねに失敗を予言し、信念は楽天家で、成功を予言する。
心が信念に支配されているときは、貧乏や失敗への恐れは入り込む余地がない。信念は疑心も寄せ付けず、そしてどんな逆境も服従させる」

「力強い信念や信仰は不老長寿の霊薬だ。それさえあれば恐れることも悩むこともない。一時の不和や厄介事に惑わされず、雲の向こうの太陽を見つめることができる。物事がやがてあるべき姿を取ることがわかる。なぜなら、目には見えない遠いゴールが見えるからだ。」

恐れることは私たちのエネルギーを奪い、生産力を下げ、衰弱させる。
信念は恐れを寄せ付けず、私たちの資質や創造の才をより有効に活用させる。

信念がないと、恐れや悩みが蔓延する。
恐れは乗り越えられるものと強く信じていれば、それを撃退する支えになるだろう。
失望、喪失、逆境、災難にみまわれた時でも精神はバランスを失わないだろう。
信念が不幸の向こう側に目を据えているからだ。
雲の裏側の太陽と、敗北と見えるものを超えたところの勝利を見つめているからだ。

失敗する人は、たいてい絶えず立ち止まっては失敗する。
自分は成功するのか、しないのか、つまるところどうなるのかと。
先行きを絶えず気にして思い悩む姿勢から疑いが生じる。
何かを達成することにとって、これは致命的でだ。

怖くてやりたくなかったことに思い切って手をつけて、最後までやり通す。
これが今までに知られている中で、一番手っ取り早くて確実な恐怖心の克服法だ。
                  
                                   -デール・カーネギー-


恐れは成功の大敵

恐怖心や不安は集中力にとって致命的であると同時に、創造的な能力にとっても大敵だ。
いかにすぐれた科学者や発明家や芸術家であれ、実業界の大物であれ、恐れや不安や心配で頭がいっぱいだったら何の成果も上げられないだろう。

感情がぶつかり合って頭の中が揺れ動いていれば、効率よく仕事をするのは不可能だ。
思考力を奪い、喜びを奪い、人を早々と老け込ませてしまうのは、実際には起きてもいない物事なのだ。

不安にさいなまれて得をしたという話をこれまでに聞いたことがあるだろうか?
恐怖におののいたことで、状況が改善されたためしがあるだろうか?
恐れはいつでもどんなところでも、作業効率を落とし、精神尽き果てさせて健康を損なわせ、私たちの願うこととは正反対のことをしでかしてくれる。

成功と幸福は、どちらも自分のエネルギーを最大限に活用しつづけられるかどうかにかかっている。
ならば成功や幸福にとって、恐れはまさしく敵であると肝に銘じておくべきだ。
まだ起こっていない災難を恐れ、やきもきして暮らす癖はやめなければならない。
気をもんだり悶々としたりすることは、心の平和や強さや仕事の能力を奪っていくうえに、人生の貴重な年月も奪い去っていく。

仕事に殺させる人はいないが、不安に殺される人はたくさんいる。
何かを実際にすることによりも、それをするのが怖いという思いの方に、私たちはよほど深く傷つけられるのだ。
不安におののくときは、頭のなかで何度もその怖いことをイメージするだけでなく、どうせうまくいかないという思いにもさいなまれているのだから。

後悔と取り越し苦労の癖を直す

悩みのなかで最悪なのは、過去の失敗をくよくよと思い返すことだ。
そうしていると野心はしぼみ、決意は鈍り、将来の目標までだめになる。

過ぎたことを思い返し、自分の落ち度や欠点を責め続けているという不幸な癖をもつ人がいる。
そういう人は、ものの見方がすべて後ろ向きになる。
物事のネガティブな面しか見ないせいで、あらゆることが歪んで見える。
またその不幸な画像は、心にとどまる時間が長くなるほど深く埋め込まれ、取り除くのが難しくなる。

悩んでいれば、成功は刻一刻と遠のいて、代わりに失敗の可能性が高くなる。
不安や心配は、その一つ一つが私たちの身体に痕跡を残していく。
それによって健康な心と身体の調和が乱され、仕事の効率が損なわれる。

恐れていることが実現するのではないかと言う心配も、本当にそうなる可能性を高めるだけである。
それなのに、あまりに多くの人がそういう余計な心配や、不必要な悩みを人生にはびこらせ、毎日を台無しにしている。

恐れの解毒剤

自分をむしばむだけの悪い習慣は、すぐに直さなければならない。
心配したり悩んだりしてりする癖をやめることに全力で取り組んで欲しい。
頭の中を勇気や希望や自信で満たしておくことである。
怖いという気持ちが舞い込んでも、それが頭脳と想像力に定着しないうちに追い払うのだ。

直ちに解毒剤を使えば、敵は逃げていくだろう。
どんな不安も恐れも、それとは正反対の思考で中和や相殺ができないほど強力でもなければ、深く浸透もしない。

アメリカ第32代大統領、フランクリン・ルーズベルトの言葉を覚えておくといい。
「おそれなければならないものは、恐れることそのものだけである」


恐れというのは威張り散らすだけの臆病者だから、征服するには、それがそこに居座っていることをただ忘れるだけでいい。
造作もないことだ。

                                   -デール・カーネギー-


恐れを克服する

恐れを克服するためには、まず何を恐れているかを理解しなければならない。
それは必ずといっていいほど、まだ起きていない何かである。
つまり、実在しないものなのだ。
怖いものとは、私たちが勝手に思い浮かべている架空の何かで、それが現実のものとなる「可能性」に脅かされているのである。

ごくありふれた恐怖を1つ取り上げてみよう。
失業の恐れである。

この災難に遭うかもしれないことを心配して惨めな生活を毎日送っている人たちは、まだ失業はしていない。
つらい目に遭っているわけでもなく困窮の心配もない。
したがって、目下の状況は満足すべきものだ。
もし本当に解雇されたら、その時は失業を恐れてももう遅いし、それまで悩んできたことも何の役にも立たなかったわけで、全くの無駄ということになる。

それどころか、再就職の準備が必要だったことを考えると、自分を不利にしていたことだけになる。
その時心配になることは、つまりどう転んでも、心配したり悩んだりすることは正当化されない。
心配のタネになるものは、常に未来の想像上の状況に他ならない。
職を失う心配をする代わりに、失うリスクを減るような前向きな行動を取るべきだ。
場合によっては新しい職を探す準備を始めるべきである。

色々な恐れを克服したければ、怖いと思うことを1つずつ取り上げて論理的に考え、現時点ではその怖いことは存在せず、単に想像しているだけということを納得することだ。
将来それがやって来ようが来まいが、今それを恐れることは時間、エネルギー、知力、体力の無駄でしかない。
飲んだり食べたりして害になると分ったものは、その後2度と口にしないのと同様に、恐れることもやめるべきだ。
もし、何か恐れなければならないなら、恐れることの副作用を恐れよう。

怖いものが架空のものだと納得するだけでは十分ではないだろう。
恐怖を示唆するものを追い払えるようになる必要がある。
すなわち頭を訓練して、恐れにつながるあらゆる思考を撃退できるようになることだ。
心の動きを常に警戒し、油断なく見張っていよう。
嫌な予感や胸騒ぎを覚えたときは、それに身をまかせて悪い想像を膨らませてはいけない。
直ちに頭を切り替えて、考えをポジティブな方向へ集中させる。

恐怖というこの人類最大の敵は、真っ向から対決すれば、普段の思考から根絶することが可能だ。
19世紀のアメリカの思想家エマーソンはこう言った。

「怖くてできなかったことを思い切ってやってみる。そうすればもう、怖いものなしだ。」



ストレッサーと3つのストレス

ストレスには3つある。

■有益なストレス(ユースストレス)
全てのストレスが悪いわけではない。
ユースストレスというのは、有益なストレスで、やる気を奮い立たせ、とびきりすぐれた仕事をさせてくれるような要因となるもので、エネルギーと集中力を増進させるポジティブなストレスだ。
このストレスは、例えば職場でプレゼンテーションをするとか人前で演奏するといった、自分がある程度市販できると感じられるような状況から生じる。
がんばればどうにかなると本人が思えるなら、そのストレスは創造性や生産性を高める傾向がある。

■有害なストレス(ディストレス)
これは破壊的でネガティブなストレスで、自分の支配力や影響力が全く及ばないように見える状況で発生する。
例えば何かに脅えたり恐怖にかられたりすると、体内に放出される化学物質が一連の反応の引き金を引いて心拍数が上昇する。
いわゆる「闘うか逃げるか反応」になる。

■過剰なストレス(ハイパーストレス)
これは有害なストレスが慢性化になっている状態で、対人関係も健康も、仕事の能力も大きく損なわれる。
「燃え尽き」と呼ばれる極度の疲労感や、胃潰瘍、心筋梗塞、神経衰弱などにつながる。


自分や自分の今の状況を哀れに思うのは、エネルギーの無駄というだけでなく、あらゆる癖の中で最もたちの悪いものだ。
                                               -デール・カーネギー-


ストレスレベルと効率

どんな仕事でも、適度のストレスがある方が効率がいい。
ストレスが全くないと、かえって仕事がいい加減になったり、はかどらなくなったりする。
たやすい仕事は気が散りやすく、見落としやミスが増えるし、眠くなることがある。

ストレスが強すぎれば、全く集中できないが、あるいは仕事のある面のことで頭がいっぱいになり、何をどうしていいのか分らなくなり、効率は悪くなる。

さらに深刻なストレスになると、統合力も集中力も著しく損なわれる。
極端な場合は恐怖感で身動きが取れなくなるが、さもなければ怒りを爆発させたり家に引きこもって職場に出てこなくなったりする。
パニックに陥って、ストレスフルな現実から逃げている状態になり、仕事はできなくなる。
こうしたストレスが長引けば、心身を病むことになる。
深刻なストレスに絶望感が加わると、場合によっては死につながる。

職場のストレスから身を護る

どんなストレスフルな状況でも、次の6つの対策のどれか、またはいくつかを使えば乗り越えられる。

S  Self-discipline (自己訓練)
T  Tender loving care (心身に気をつける)
R  Relaxation (リラクゼーション)
E  Excercise (エクササイズ)
S  Sense of Humor (ユーモア)
S  Seek help from others (人に助けを求める)

 ■自己訓練
かんしゃくを抑えることができないなら、この会社にとどまることは難しいと上司から警告されたとき、ベンは初めて理解した。
自分の身勝手なストレス発散が、つまり怒鳴ったりわめいたりして不満を爆発させることが、他人のストレスをつくっているだけでなく、実際には自分のストレスもより大きくしていたのだと。

そう気付いたときから、感情の爆発を抑えることに集中的に取り組んだ。
これはゲームと考えることにした。うまく気持ちを抑えられたら、その都度自分にちょっとしたご褒美をあげる。
そうやって衝動に負けない精神力を鍛えていった。
その努力の甲斐あって、感情を爆発させる回数が減っただけでなく、それまで腹が立ったようなことでもすんなり受け容れるようになって、仕事のストレスそのものが減ることになった。

■心身に気をつける
ベヴァリーは、あるとき医師から、身体を大事にしなかった結果、プレッシャーやストレスを感じるようになったのではないかと指摘された。
体重を減らし、血圧を下げるような食事のしかたを指導された。

するとどうなったか?
彼女は痩せて、自分でもずっと健康になったと感じ、容姿にも関心が向くようになった。
ヘアスタイルを変え、新しい服も買い揃えた。
そうやって自分大事に扱っていると、以前ほどイライラしなくなり、それまでに重荷に感じていた仕事ともうまく付き合えるようになってきた。

■リラクゼーション
ストレスを感じる場所からしばらく離れるだけでも気分が変わる。
眺める景色が変われば、たとえそこが社内の別の部屋に過ぎなくても、緊張が解けやすくなる。

空想にふけることも効果的なリラクゼーションになる。
楽しい思い出に心を集中させる。
愉快なことのたくさんあった休暇の旅行や、美しい景色や、幸せなできごとを思い出す。
それらの瞬間に心をよみがえらせ、楽しさを味わう。

花の匂いをかぎ、潮風に吹かれ、山の空気を胸いっぱいに吸い込み、あたり一面の金色のスイセンにみとれる。
脳がストレスフルな状況から離れ、快適な思考を浴びれば、緊張が緩み、ストレスが解けていく。

張りつめた気分をほぐすもう一つの方法は、仕事のスペースを変えることだ。
いくつもの仕事を抱え、同時進行でこなしている人は多いだろう。
もし今取り組んでいる仕事のプレッシャーに耐え切れなくなったら、しばらく別の仕事をする。

■エクササイズ
軽い運動や体操で身体を動かすことは、ストレス解消にとっても効果的だ。
だが20人が働くオフィスのど真ん中で飛んだり跳ねたりするのは得策ではないだろう。
人に迷惑をかけずにできることはたくさんある。
呼吸のエクササイズは簡単にできて、誰の邪魔にもならない。
鼻から深く吸って、口からゆっくりと吐く。
これを何回か行えば、身体全体が反応してリラックスし始めるのが分るだろう。
簡単に覚えられて、好きなときにできるリラクゼーションのエクササイズには他にも色々ある。

■ユーモア
ストレスに押しつぶされそうなときは、身の回りにユーモアを見出すのが難しい。
だが、ちょっと離れたところからその状況を眺めれば、たいてい何か笑えるところがあるものだ。

多くの医師が笑うことをストレス解消の手段として、また身体的な痛みを取り除く方法としても推奨している。
ユーモアを解する人は、そうでない人よりもストレスに悩むことが少ない。
つらい状況の中にも何か笑えるものを求め、見出すことによってストレスがやわらぐことは珍しくない。

ポールは笑えるマンガ本を書棚に常備している。
仕事でカリカリした時は、それらに手を伸ばして、コーヒーブレイクならぬ「お笑いブレイク」をとる。
ページをめくるうちに頬がゆるみ、クスクス笑いが漏れ出して、時には笑い転げることもある。
それだけで気分が晴れ、肩の力が抜け、ゆったりした気持ちで仕事に取り組める。

■人に助けを求める
人生にはストレスが大きすぎて、自分では立ち直れない事態も起きる。
そんな時はプロのカウンセラーや牧師や、その分野の専門家に助けを求めることだ。
ジュディスが夫を失った時は、動揺して仕事が全く手につかなかったが、幸いなことに、喪失体験を専門とするセラピストに助けを求めるという分別を失わなかった。
そのグリーフセラピーに支えられて、難しい悲嘆の時期を無事に乗り越えることができた。

プレッシャーのもとで自分のやるべき仕事にきちんと取り組めるように、緊張緩和の方法をいくつか身につけておくことは誰にでも必要なことだ。
ほんの数分のリラクゼーションでもストレスがやわらぎ、元気とやる気を取り戻して職場に戻ることができる。
ストレスに負けてはいけない。
ここで提案した方法のいくつかを取り入れれば、頼もしい道具にもなり、心身にプレッシャーのかかる問題に取り組むのも、健全で生産的な人生を取り戻すのも、ずっと楽になるはずだ。

問題解決のストレスを減らす

問題解決のストレスをできるだけ減らし、同時にすぐれた判断をするには、計画的で周到な手法が必要だ。

1 あらゆる事実を入手する
悩みは正確に書き表す。
大発明家で、ゼネラル・モーターズを率いたチャールズ・ケタリングは「問題をきちんと述べることができたら、半分は解決している」と言った。

2 事実を分析する
事実に対してどんな反応や解決がありうるかを考える。
選択肢のそれぞれから派生する問題について考えることも忘れてはいけない。
解決につながるかどうかだけでなく、その選択肢によって関係者にどんな影響が及ぶかも考える。

3 決定する
すべての選択肢を十分に考慮し、最良の解決策や行動になるのはどれかを判断する。

4 決定に従い実行する
決定したら、それに従って直ちに行動を開始する。
それによってストレスフルな状況がこちらの支配下に入る。
ただ行動を開始するだけでも、ストレスは驚くほど軽くなるものだ。

ハイテク社会とストレス

21世紀に入り、職場を支えるテクノロジーの進歩は、ついていけないほど急速になっている。
今や私たちは文字通り1日24時間、週に7日間、仕事ができる。
これは一見これまでおりも多くのことが日々成し遂げられて、途方もないことが達成できるように思えるかもしれない。
だが一方では職場にも人生にも、ストレスと緊張が同様に増えていく。
そういうハイテク社会で心身の健康を保ちながら生産性も高めるにはどうしたらいいのか。

1 「ぶっ通し」と「ながら」の禁止
コンピューターは毎日24時間、休みなく働く。
それは人間にはできないことだ。
だからコンピューターのまねをしてはいけない。

例えばデスクについたままで昼食をとってはいけない。
休憩はさぼっているのとは違う。
元気を回復するのに必要な時間だ。

2 職場と家庭の間に境界線を設ける
テクノロジーの進歩のおかげで、会社にいる必要がなくなり、家でも仕事できるようになった。
しかしこれは実際には、仕事から逃げることをより難しくしている。
職場と家庭の間にも心理的なファイアーウォールを設ける必要があるだろう。
家庭生活を仕事の不法侵入から護るために。

3 定期的に接続を断つ
携帯、ノートパソコン、机の上のパソコンなどの電源を切る。
そしてゆったりと心身をのばし、しばしの静寂を楽しむ。

4 常時「待機中」を断つ
映画館に行くときは携帯を家に置いていく。
メールや留守番電話のチェックはしょちゅうではなく、たまにでいい。
休憩は必ず時間いっぱい取って元気を回復する。
そうすれば仕事にもどったときにずっと能率が上がる。
それにメールはいくらでも待ってくれる。

5 何もかも今すぐやることはできない
あらゆることを特急でやる必要はないはずだ。
常にそういうプレッシャーがかかっているとしたら、そしてこちらが怠けているのではないのが確かなら、テクノロジーの乱用か、それとも組織内のプランニングと時間管理を見直す必要があるかのどちらかだ。



今日の職場では「燃え尽き」は少しも珍しくない。
だがそれは、ウンザリしたり、もうやりきれないと思う日が1日や1日あるのというのとは全く別物だ。
仕事をしていれば荷が重過ぎるとか、飽き飽きしたとか、誰にも認められないと思うような日は誰でもあるものだ。
必死で時間をやりくりして、やるべきことを全部やり遂げても、褒めてもらうどころか気付いてさえも貰えず、すっかりやる気を失せることはあるし、出社するのにもすごい決心が要ることもある。

そういう職場のストレスと燃え尽きとは同じではない。
燃え尽きは慢性的なストレスが原因のこともあるが、単なるストレス過多とは違う。
ストレスの時には大いに気がもめて、様々に思い煩おうが、燃え尽きになると、改善への望みも全く持たなくなる。
どうしたいとも、どうなりたいとも思わなくなる。

人間は徐々に、たいていは知らないうちに燃え尽きていく。
燃え尽きが心筋梗塞や胃潰瘍などの身体症状を招くこともあるが、ほとんどは心理的な問題となる。
意欲、活気、欲求を失い、それが色々な形にを取る。
仕事をする気がせず、同僚とやっていけず、上司を信じることができず、毎朝職場へ出るのが嫌で仕方なくなる。

燃え尽きは過剰なストレスでも起きるが、原因はそれだけではない。
挫折の結果のこともある。
約束を破られたとか、予定されていた昇進や昇給が見送られたとか。
リーダーや経営者は、1つ間違えば大惨事を招くような意思決定のプレッシャーから燃え尽きに至ることもある。
異常な長時間労働を強いられたり、報われない仕事をし続けた結果のことである。

ストレスと燃え尽きの違い

ストレスとはだいたいのところ、背負うものが重過ぎる状態だ。
あれこれの重圧がかかって身体的にも精神的にも耐えられなくなった状態と言えるだろう。
だがストレス状態の時は、もしも色々なことが自分の思い通りになったら、きっと楽になるだろうと想像することができる。
ところが燃え尽きになると、心が空っぽになり、何をどうしたいとも思わず、何もかもどうでも良くなる。
燃え尽きに至った人たちは、自分の状況が好転するという期待を全く持たなくなる。
ストレス状態を対処能力が溺れつつある状態とすれば、燃え尽きは完全に干上がってしまった状態だ。

燃え尽きを回避する

仕事が原因の燃えつきを阻止するいちばんの方法は、その仕事を辞め、別の仕事をすることだ。
それは時には転職や、人生の方向転換を意味する。
だから多くの人にとっては最後の手段であって、気軽に選べる道ではない。
自分のストレスレベルと負担が燃え尽きに以降しつつあることに早く気付き、予防的な措置を取る方がはるかに現実的だろう。

■期待される職務を明確にする
上司や監督者と共に職務上の義務、責任を検討し、職務記述書を改定してもらう。
話し合いの中で、普段自分に期待される仕事が職務記述書に記されていないのを指摘すれば、働き過ぎや範囲外の仕事をしていることが証明でき、要望が通りやすくなるかもしれない。

■異動を願い出る
ある程度大きい職場なら、別の勤務地、支店、部署などへ異動できるかもしれない。
景色が変われば気分も変わる。

■仕事の内容を変えてもらう
長期間同じ仕事をしているときは、何か新しいことをやってみたいと願い出るのもいい。
営業の担当区域を変えてもらうとか、新しい企画へ参加するとか、それまでとは異なる役職につくとか。

■休暇を取る
燃え尽きが避けられないと思われるときは、しばらく仕事から完全に離れる。
有給休暇を使って旅行や保養に行くか、休職を願い出る。
何らかの手を打たないと、その状況から抜け出すことはできない。
時間がかかっても充電し直して、立ち直りを図る。

頭が疲れたら、身体を動かす

身体が疲れたら休息をとればいい。
だが今日の職場では、たいてい身体より身体や心の方が疲れている。
コンピューターを使う人や、神経をすり減らすような仕事に人は、軽い運動などで身体を動かすことが疲労とストレスの緩和になる。
昼休みに少し散歩するだけでいいし、水泳やジョギング、仕事帰りにジムに立ち寄るのもいい。

職場にエクササイズルームがあれば、昼休みや帰宅前にエアロバイクやウエイトマシンなどが使えるだろう。
習慣的に運動している人は、精神的な疲労が少ない。

燃え尽きそうな人を助ける

部下や同僚が燃え尽きのサインを出しているのに気付いたら、回復に手助けをしなければならない。

■支えになる
話をじっくりと聴き、そうすることで心から心配していることを伝える。
その人が何に苦しんでいるのかを理解し、全体像をつかむ。

■職場環境を変える
その人の職務を変える権限があるときは、異なる仕事を割り当てるか、他の部署へ異動させて職場環境を変える。
気分が一新して意欲がわくことがある。


■新しいスキルを獲得する機会を与える
これは燃え尽きを招いた状況から学習や成長へと視線を移すのに役立つだけでなく、会社によってより価値のある人材を育成することになる。

仕事が多すぎるとき

リーダーの役割は、スタッフがその力量を十分に発揮できるような職場環境を確保することだ。
スタッフが疲れて、燃え尽きに至るようなことがあれば、生産性が落ちることになる。
事業規模の縮小や組織再編の後には、とれりわけそういうことが起こりやすい。
人数が減って、一人ひとりの労働時間が長くなり、激務になるからだ。

まず、グループの抱えている仕事を徹底的に分析する。
各プロジェクトにスタッフ一人ひとりがどれだけ時間を使っているかを調べる。
次にそれらのプロジェクトが部門の目標達成にどれだけ重要かを判断し、スタッフとともに優先順位を再検討する。
重労働にならないように要領よく働くにはどうしたらいいかを彼らとともに考える。
こうした分析をしても、まだ効率的に扱える以上の仕事をグループが抱えていると感じるときは、出来高を調べて、グループとしての優先順位を付け直す。
特に時間を食うような仕事は、他よりも重要度が低ければ延期を考える。
よそのグループに仕事を回すことや、応援を頼むことも考える。

共同関係にある他のグループや部門から仕事を急かさせることがある。
その時は相手側のリーダーと話し合い、スタッフの負担が増えないようにスケジュールを調整する。
合意に至らない時は、両方のグループを監督する上司に相談する。

燃え尽きのプロセス

燃え尽きに向かいつつある人は、次のような特徴を示す。

・手がけている仕事のために身体的、精神的に無理な重労働をする

・手がけている仕事の要求に応えるために、個人的欲求、家族、それまで携わってきた他の活動を無視する

・社会的接触が極端に減る

・しばしば常軌を逸した行動を取る

・生きることが空しいと感じる

・重いうつ状態に陥る


自分が、あるいは部下や同僚が、こうした燃え尽きの兆候をいくつかし始めているのが分ったら、大事に至る前に急いで対策を取らなければならない。
燃え尽きは個人でも組織でも、色々な方法で対処できる。
仕事内容の見直しや調整、組織内で手助けするだけでも燃え尽きにつながる問題の多くが軽減できる。


人生に退屈してるって?
だったら何かこれと思う仕事に全力で取り組んでみることだ。
その仕事を命がけでやってみよう。
そうすれば、思ってもみなかった喜びに出会えるだろう。

                      -デール・カーネギー-


燃え尽きないために心がけること

・「ものを考える時間」をとっておく。

・このままでは限界を超えると思ったら、その時点で思い切った策を取って負担を減らす。

・手に余るほど多くの仕事を引き受けない。
職場にはたいてい「職業記述書」があり、誰にどんな仕事が期待されているかが明記されている。
しかし実際には同僚から手伝いを頼まれることも、予定外の仕事を買って出ることもある。
それらを引き受ける前に、自分が今どのように時間を使っているかを分析する。
燃え尽きを避けるには、自分の時間を最も望ましいかたちで使うこと。
自分たちの目的達成にとってあまり意味のないことは、多く引き受けすぎないことを学ぶことである。

・たいていの人には職場以外にも、教会や地域や趣味の世界などに活動の場を持っている。
そうした活動は大事だが、そこに注ぐ時間にも限界を設けなければならない。
仕事に費やす時間と一緒になると無理が生じ、燃え尽きに至ることがある。
普段の生活の中に自分のための防衛境界線を設けて、自分を「減らすのではなく満たす」活動を賢く選択することだ。

・ペースを落とす、急がない。
速いのはよいことだ。より速いのも結構だ。
だが速すぎるのはいけない。
速さを重視しすぎれば仕事の質が犠牲になるし、自分だけでなく他人にもストレスがかかる。

・人間を好きになる。
人間関係を大事にして、心の通う友人同士のネットワークを築いて欲しい。
良き友人を持つことは、健康に長生きするための大事な要因であることが研究で証明されている。
胸のつかえを吐き出せる人、成功や失敗を分かち合える人が身近にいれば、燃え尽きに至るリスクはほとんどなくなる。

テクノロジーを手なずける

電話、携帯、Eメール、FAX、そういうものは全て強引に即座の対応を要求する。
おかげで私たちは四六時中急ぎ立てられ、追い立てられてきりきり舞いだ。
そういうテクノロジーのお陰で仕事が楽になるどころか、往々にして仕事の奴隷になっている。
時間を節約するという触れ込みのこうした機器たちは、本当は時間をどんどん食いつぶしているモンスターなのかもしれない。
テクノロジーは敵ではなく味方につけるには、これらを手なずけ、飼いならす必要がある。

・時には接続を断つ。
集中が必要なときは、携帯電話の電源を切り、パソコンをシャットダウンする。
または機器が一切ない静かな部屋へ行く。

・Eメールに返信する時間を決めて、そのスケジュールを守る。

・Eメールの着信音は消しておく。

・Eメールの自動受信の感覚を大きくあけてタイマーを設定する。

・ボイスメールの応答メッセージを、こちらの都合が分るものに変えておく。
Eメールも「ただいま出張中です」というように自動返信させる。

・メッセージの処理は、最初に読んだときに、できるだけその場で済ます。

・機器より人間を優先させる。
人と話しているときは、電話にボイスメールで応答させる。

・携帯、パソコンの奴隷にならない。
チェックする間隔を決め、そのとき以外は触らないように訓練する。


マルチタスク人間をやめる

マルチタスクというのは、いくつもの仕事を抱え、並行をこなしていくようなやり方のことで、もともとはコンピューター用語だった。
コンピューターはいくつもの仕事が同時進行するように設計せれているが、人間はそうではない。
マルチタスクは仕事がずさんになりがちで、重大なミスを招くこともあるし、何より問題なのは燃え尽きにつながることだ。

いくつもの仕事を同時にこなせる人は大勢いるが、心と身体の許容量には限界がある。
燃え尽きを避けるためには、自分にはどれだけのことが成し遂げられるのかを認識して、それに応じた目標を立てることだ。
多すぎる量を短すぎる時間でこなそうとすると、往々にしてこなせた量は少なすぎ、時間はかかりすぎ、出来はさんざんということになる。



達成しないことが明確でない限り、時間をうまく使えるのかどうか判断する方法がない。
職場では、何をするときにもこう自問するべきだ。
「私のしていることは目標達成に役立つことか?」
答えが「ノー」なら、時間を無駄にしていることになる。

といっても、あわてなくてもいい。
答えは「イエス」より「ノー」の方がずっと多いだろう。
それは職場では、生産的ではない仕事を求められることがよくあるからだ。

例えば大きな組織では、自分のしたことが他の人にも分るように記録を残すことが求められ、そこに法外な時間が費やされる。
これは管理上必要かもしれないが、生産性には少しも寄与しない。
時間をもっと有効に使うには、自分のしていることが目標に結びついているかどうかをまず判断することだ。
もしも結びついていなければ、それらをやめれないかどうかを検討する。
やめられないと分れば、それにかける時間を減らす。
そうすれば真に生産的な仕事に時間をつぎ込める。

明確な目標を設定する


1 明確に表す
達成したいことを明瞭な言葉にする。
例えば「品質の向上をはかる」という言い方では目標としてあいまいすぎる。
「今年度までに返品率を23%減らす」というように具体的にする。

2 区切りを設ける
達成の見通しが立つような目標でなければ、設定する意味がない。
長期的な目標は中期、短期の目標に分割すると達成しやすくなる。

3 個人の目標を組織の目標に合わせる
自分の目標や部署の目標が、会社のそれと一致していなければならない。
さもないと何をやっても時間の無駄になる。
自分の目標がどんなに立派でも、組織が求めることをやらない限り生産性に寄与しない。

4 調整を可能にする
設定した目標が達成不可能になることがあるが、あきらめることはない。
何が問題なのかを、必要な調整をすればいい。

5 現状に甘んじない
目標が達成されたら、直ちに次の目標を設定して努力を続け、さらなる向上と成長を目指す。

時間の使い方を分析する

日ごろの時間をどう使っているかをつかむには、記録をとって分析する。
簡単なやり方は、一労働日を15分ごとに区切った表を作り、その1コマごとに、そのとき何をしていたかを書き入れていく。
これを何日間か行う。
連続した日でない方がいい。
同じ企画に携わる日が数日続くこともあるからだ。
週に2日ほどの記録が3週間分くらいあれば、日ごろの時間の使い方がかなり正確につかめるだろう。

この記録を調べれば、タイムマネジメントの大事なことがよくわかる。
同じ仕事を2度やったり、、余計な書類を作ったり、不必要なチェックを繰り返したり、くだらない世間話に付き合ったりして非生産的な活動にどれだけ時間のむだ遣いをしているかが分って、たいていの人はショックを受けるだろう。

それにこういう分析をすると、仕事に邪魔が入って中断を余儀なくされるこおがどれだけ多いか、またその邪魔がどこから入るかという重要なことがわかる。

困るのは、日中忙しすぎて、記録用紙に記入するのを忘れることだ。
もちろん15分ごとに記していくことに越したことはないが、仕事に没頭していたら、後で記入すればよい。
思い出す時間もかかるし思い出せないこともあるが、完全に正確であることよりも、自分がどう時間をつかっているかがはっきり分ることの方が大切だ。


難しい仕事から手をつけなさい。
たやすい仕事は放っておいても片付く。

          -デール・カーネギー-


不測の事態に備える

厄介ごとにスケジュールを台無しにされるのを避けるには、、不測の事態を処理する時間をあらかじめ組み込んでおくことだ。
ある程度の期間にわたって1日の活動を分析すれば、予期せぬ出来事に処理するのに日々どれだけの時間が費やされているかが分るだろう。

例えば、ごく平均的な労働日の8時間のうち、2時間がそういう緊急事態の処理に使われていたら、1日を6時間と考えてスケジュールを立てる。
そうすれば、予想外のことも想定内となり、ゆとりをもって対応できる。

またどれほどうまくスケジュールを立てても、その通りに事が進むことはあまりない。
入念な計画をぶち壊そうと、災難はいつでも待ち構えている。
そういう時間泥棒に気付いていれば、貴重な時間を無駄にすることがずっと少なくなり、その分有効に活用できる。

仕事を先延ばしにする癖と対策

さしたる理由もないのに仕事を先延ばしにするのは、時間を生産的に使う上で最もよくある問題の1つであり、ストレスの発生源である。
この癖に悩まされている人は大勢いるが、なぜ先延ばしにするかは、人により様々だ。

■嫌いな仕事を後回しにする
好きな仕事を先にすれば、嫌いな仕事が後に残る。
締め切りが迫ってきて、やっと手をつけても、嫌いだから嫌々になり、おそらく出来は悪い。
つまり、3つの×が付く。

嫌々やる、出来が悪い、締め切りに苦しむ

3つのストライクを取られて、これはアウトだ。
しかし嫌いな仕事が済んでいれば、たとえ日にちがなくても好きな仕事で勝負できる。
出来はいいはずだ。
締め切りに苦しむのは同じでも、結果は大いに違う。

心理的にマイナスなのは、嫌いな仕事を後回しにすると、好きな仕事も楽しめなくなるからだ。
「これが済んだら、あのウンザリな仕事が待っているんだ…」と暗い気分で働かなければならなくなる。
もし嫌いな方から手を付けていれば、好きな仕事を楽しみながら働ける。


大した仕事ではないように見えても、惜しみなく全力を注ぎなさい。
一つやり遂げるたびに、それだけ力が付いていく。
小さな仕事がうまくこなせれば、大きな仕事がひとりでに片付いていくだろう。

                                    -デール・カーネギー-



■失敗が怖い
失敗が怖いというのは、仕事を先延ばしにする大きな理由だ。
キムがいい例で、仕事に自分から手を付けることがまずできない。
色々な言い訳をして先送りをしようとする。
怠け者と言えばそれまでだが、たぶん無意識の理由がある。
仕事をするのが嫌だというよりも、ちゃんと仕上がらないのが嫌で、逃げているらしい。

キムはリスクを負うことができない人なのだ。
だから上司からせっつかれるまで腰を上げようとしない。
指示されたことに少しでも疑問があれば、これまた完全に納得いくまで絶対に手を付けない。
表面的にはもっともな理由かもしれないが、キムの場合は自分の能力にもっと自信が持てないと、先延ばしの癖は直らないだろう。

■取りかかりが遅れる
締め切りに間に合わないのは、仕事の仕方が遅いのではない。
取りかかるのが遅いのだ。
ディックも取りかかりが遅れるせいで、締め切りに遅れる。

彼の場合はこうだ。
ある日、上司からプロジェクトを割り当てられる。
締め切りは8週間後。

するとディックは「8週間後か、ずいぶん先だなあ」と思い、他の急がない仕事といっしょに引き出しに放り込む。
2、3週間経ったこと、一度それを取り出して眺め、「まだ時間はあるな」と、ふたたび引き出しにしまう。
そしてある日、ふと思い出して取り出してみると、なんと締め切りギリギリではないか。
もう一刻の猶予もない!

時間のゆとりのある仕事を割り当てられても、プランは直ちに立てる。
他の仕事とどちらを優先させるか、必要な情報や機材が手元にあるかどうかを検討する。
以前の経験もふまえて、どんな問題が発生するかも考え合わせ、いつ取りかかればいいかを判断する。
6週間かかるプロジェクトを見積もったら、それに合わせて開始日を決め、できればその時点で区切りごとの中間締め切りも設定してしまう。

そこまでやっておけば、あとはもう開始日がやって来るまでその仕事のことは忘れればいい。
例えば来月の1日がその日だったとしよう。
1日になったとき、カレンダーを見ると、今日のあの日があの仕事にとりかかる日ということが分かる。
で、さっそく取りかかる、というのは先延ばしをする癖がなければの話だ。
思いつく限りの言い訳を並べて、取り掛かるのを延期しようとするだろう。
そのときちゃんと取りかかるように、誰かお尻を叩いてくれる人がいるといい。

■自分にご褒美をあげる
もう一つのやり方は、自分にご褒美をあげて励みにすることだ。
キャロルは成人後の人生に影を落としてきた悪い癖が2つあた。

1つはさっさと仕事にとりかかれないこと。
もう1つはダイエットが続かないことだ。

誘惑に負けて、つい甘いものに手を出す。
「好きなものは好きなんだもの、しょうがないわよ」と。
そして自己嫌悪に陥る。

彼女は一念発起して、この2つの欠点を一緒に解決することにした。
仕事に予定通り取り掛かって中間締め切りに間に合ったら、その日は甘いデザートを食べても良いというルールだ。
「仕事が多すぎるわけじゃない。だからルールは十分に守れるはずよ。それにこれからはカレンダーを見たときに、今すぐ仕事を始めれば、今夜はデザートが待っていると思えるわ」

ご褒美は食物でなくてもいい。
だが自分にご褒美を約束すれば、欠点を克服する努力がだいぶ楽になる。

トラブルのない仕事はない

どんな仕事にもトラブルは生じ、想定外の問題が起きる。
それを災難と思わずに、腕試しのチャンスと見ることだ。
またスケジュールを立てるときに、そうしたことも考慮にいれておくべきだ。

ナオミが同様の厄介な仕事を請け負ったときは、かつての似たような経験を振り返り、発生の可能性がある問題のリストを作って乗り越えるプランを立てた。
難しい問題が降りかかるのを怖がって、取り掛かるのをぐずぐずと先延ばしにするのではなく、ナオミはその時間を使って起きそうな問題を予測し、それに対処する準備をして、困ったことになるのを防いだ。

嫌いな仕事を好きになる

「嫌い」はもちろん言い訳にならない。
販売報告書の作成に喜んで取りかかれるような方法がどこにもないものか?
あるとき、統計をカラフルな図表にたちどころに変換してくれるコンピュータープログラムのことを読んだキースは、これだと思った。
さっそく上司に掛け合って、報告書をこの新しいフォーマットで提出してもいいという許可を取り付ける。
それからというもの、彼はこの新しいテクノロジーに夢中になり、退屈で嫌いだった仕事が、おもしろくてやりがいのあるものへと大変化を遂げたのだった。


とてもやりたがかった仕事なら、うまくいかなくなってもあきらめたり投げ出したりしてはいけない。
何か他のやり方を試すことだ。
あなたの楽器に弦は1本だけではない。
うまく音が出るのを見つければいい。

                                              -デール・カーネギー-



未処理箱を処理する

デスクの箱があふれていたり、「未読」のメールが延々と並んでいるのを目にするだけでもうんざりするが、そこへ追い討ちをかけるように「新着」が押し寄せてくれば、もうお手上げという気持ちになる。

■優先順位をつける
マネジメントの専門家は、仕事をA、B、C、Dのランク分けすることを勧めている。
Aは最も重要なもの、Bはその次のランク、Cは日課や定例の仕事、その他のすべてはDに分類される。
しばらく放っておいてもいいものや、人に頼めるもの、あるいはまったく無視して構わないものなどだ。

■通信手段ではなく内容に注目する
コミュニケーションの専門家は、「媒体」に惑わされてはいけないと警告する。
情報を受け取る手段ではなく、メッセージそのものに注目すべきだと。
Eメール、携帯メール、FAXといった特急の手段で受け取ったからといって、通常の手段で配達されたものより重要だとは限らない。
最近では定例の通信にもそういう高速の方法を使いたがる会社や人がとても多い。
内容を読んで、本当の重要性に従って処理することだ。

■割り込みに注意する
優先順位をつけ終えたダイアンは、ランクAの処理にとりかかった。
パソコンのディスプレイに向かっていると、たびたびメールの受信を知らせる着信音が鳴る。
ダイアンほど訓練された人間でなかったら、そのたびに全てを中断して新しいメールに飛びついていただろう。
ダイアンは事情が許す限り、1つの仕事を完了させるまで他のことには手をつけないように自分を訓練している。
上司の電話や来客などで予断を余儀なくされることも多いが、追加の書類やEメールなら、たいていいくらでも待たせられる。

未処理箱や未読のメールボックスを空にできたためしがないと嘆いている人が大勢いる。
「やっと目鼻がついたと思ったとたんに、どっさり投げ込まれるんだから。」
残念ながら、それが普通だ。
どこの会社でも、平社員であれ管理職であれ、息つく暇もないほど仕事に終われ、すべてがきれいに片付くことなどありえない。
職員が増えれば楽になるだろうが、それは今日のようなコスト意識が高まる一方のビジネス環境では、なかなか実現しない。
私たちが賢く仕事をこなす方法を学ぶしかない。

■もらった通知の余白に返事を書いて送り返す
例えば社内の他の管理職から、何か依頼の通知が来たら、新しい用紙を使わずに、受け取った通知の余白に返事を書いてそのまま送り返す。
手元に控えが必要なら、返事を書いたものをコピーしてファイルする。

■返信を代行させる
文書やメールでよそから情報を求められたとき、その情報をチームのほかのメンバーからもらわなければならないことがある。
そういうときは情報だけもらわずに、そのメンバーから相手に直接返信してもらえれば、手間と時間が相当節約できる

優先順位をつけて、それを守れば「未処理」の奴隷ではなく、主人になれる。
優先順位を正しく決めるには、媒体に惑わされず内容で重要性を判断することだ。
また文書やEメールの処理方法を建設的に見直せば、時間を無駄にせず、ずっと生産的に仕事ができる。

恐れずに仕事を任せる

働きすぎのストレスを避ける最良の道は、仕事を減らすことだ。
信頼できる部下がいて、手際よく満足に任務を遂行できることがわかっていたら、彼らに仕事を任せるべきだ。
管理職は、監督する職場のあらゆることに責任がある。
しかし、あらゆることを自分でやろうとすれば、たとえ毎日12時間働いていても追いつかないだろう。
それは燃え尽きや胃潰瘍、心筋梗塞、神経衰弱へとまっしぐらだ。

もちろん、管理職にしかできないことも、決められないこともある。
人任せにできない複雑な領域もあるだろう。
それらこそリーダーの仕事だ。
しかし他の多くは部下でもできるし、できることはまかせなかればならない。

彼らに仕事を任せるのをためらう理由は、次の3つだ。

■自分でやる方が早い
確かにそうかもしれないが、自分の時間とエネルギーはもっと重要な仕事に注がれるべきだ。
彼らスタッフは、グループの業績に貢献できる才覚とスキルがあるからこそ雇われたのだ。
仕事を任せれば、その力を発揮するチャンスになる。
すなわち仕事を任せることは、自分は相応の責任がある仕事ができるし、部下には腕を磨き、実績を残すチャンスが与えられるという一挙両断のやり方だ。

■その仕事はおもしろいから人に譲れない
人に任せる気になれないお気に入りの仕事が誰でも1つや2つはあるだろう。
だが、仕事は客観的に見なければならない。
たとえ大好きな仕事でも、他に管理職としてやるべきことがあるときは、部下に譲る。

■人に任せてちゃんと仕上がらなかったら困る
スタッフの採用、教育、スキルの育成を通じて、管理職である自分は信頼できる真のチームを育てている。
彼らはきっと仕事をやり遂げられる。

仕事を断る

サリーは新しい仕事の割り当てや、同僚の手伝いを決して断らなかった。
そういう飛び入りの仕事が重なれば、抱えている仕事がはかどらない。
あるときにっちもさっちも行かなくなって、精根尽き果てて、燃え尽き寸前にまで追い込まれた。

幸いなことに人事課長が問題に気付き、彼女を呼んだ。

「サリー、あなたは力に余るようなことをしているわ。先月は自分の仕事だけでも大変なのに、サムの手伝いをして、おまけに会社のピクニック委員会の仕事まで引き受けている」

「サムはとても大変そうで、頼まれると断れませんでした。ピクニック委員会の方は、去年のメンバーだったもので、議長からどうしてもと言われると引き受けなければならない気がして…」

「あなたはいい人ね、サリー。でもいい仕事をして会社に貢献したければ、そして自分が心身ともに健康でいたければ、ノーと言えるようにならなくてはね。」

サリーは、自分の目標や部署の目標に寄与しないような仕事まで引き受けなければならないと感じるのは、あるいはそうしてまで人にすかれるようになることは、自己破壊的な行為だと気付いた。
そして、自らの自制心に加えて友人の励ましも必要としたが、そういう要求を上手に才如なく断るすべを徐々に身に付けていった。



職場でも私生活でも、もののやり方が変わるというのは不安なものだ。
長く馴染んできたやり方を、ある日を境に変えろと言われる。
特に仕事ぶりを常に上司に観察されて評価されている職場では、これは悩みのタネだろう。
ようやく自信が持てたところ、変えるように指示されることもある

変化への反応は人によって違う。
自分や周囲への影響をどう感じるかが違うからだ。
しかしいずれにしろ私たちは組織の変化に順応するという課題を突きつけられる。
それは心の姿勢、感情、自分自身を適応させていくことだ。

職場環境が変わるときは、誰もが多かれ少なかれ不安を覚える。
その変化は自分にとって有利なのか、不利なのか。
組織の運営方針が変わると、自分の将来はどう変わるのか。
それまでやってきた仕事は、これからも評価されるのか。
分らないことだらけだ。
変化の時をうまく乗り切るには、不安や恐れを払拭する方法を見つけなければならない。


快適な居場所

職場には誰でもその人なりの居場所がある。
長く馴染んできた職場や仕事には、快適に感じられて自信の持てる側面があるからだ。
異なる仕事をしなければならなくなると、そこから追い出されてしまったような気持ちになる。
成功する人々は、こうした居場所を追われることを何度も経験し、受け入れる。
新たな経験をするときも、大きな責任を負うときも、職場の変化に順応しようとするときも。

変化を乗り切るのは容易ではない。
自分の仕事についてそれまでの考えが通用しなくなることも多い。
その先果たしていく役割は、それまで考えていたものとは全く違うかもしれない。
組織が成功を目指して変化するときには、誰もができる限り柔軟である必要がある。
それが私たちにとってしばしば大きな課題となる。
特に、行きたくない方向へ追いやられるときや、出世の階段を逆戻りしていると感じるときはなおさらだ。


順応性を養う

変化は心の姿勢に打撃を与える。
先行きへの不安や居心地の悪さだけでなく、時には変化に伴う現実的な問題も抱え、全く前向きになれないことがある。
またある日は変化とうまく付き合えても、次の日には恐れや怒りに圧倒されて、気持ちを立て直すことができないかもしれない。
そうなると、変化の過程にどんどん貢献できなくなる。

仕事についている限り、私達の役割と責任は変化し続ける。
チームを指揮したり、会議を率いたり、ビジョンや使命を人々に伝えたりといったことは、全ての地位の上昇と共に直面していく課題だ。
こうした仕事や環境の絶え間ない変化の中では、優れた順応の能力こそが、私達の長期にわたる着実な成功を決定付けるものとして何より重要なスキルかもしれない。

1 期待を調整する
今年は昇進できるものと期待しているかもしれない。
だが景気が悪化したり、会社が内部的問題を抱えたりしたら、期待をそれ相応に調整する必要があるだろう。
昇進は来年か、あるいはもっと先と考えた方がいい。

2 変化に備え、ネットワークを築く
これは楽して、やりがいのある適応作戦だ。
曲がり角の向こうには必ず変化が待っていると考えよう。
その変化が起きたとき、誰と知り合いだったら、誰と親しかったら助かるだろうか?
そういう人間関係を築くことに今すぐ取りかかる。
そして支えあう励まし合う広大なネットワークを作る。

3 辛抱強くなる
変化を迎えると、その混乱を早く終わらせたい、抜け出したいと何度も思うだろう。
だが職場では、新しいやり方が定着するまでに思いのほか時間がかかることがある。
変革が通達され、実施され、周辺の組織が全て機能を調整していくには時間が必要だ。
個人が職場環境の変化に順応するにも時間がかかる。

4 冒険心を持つ
変化はチャンスと捉えよう。
仕事上の変化を成功への足がかりとした人々は、リスクを負うのを恐れなかった。
私たちも変化の中へ恐れず身を投げ出して計画し、準備し、人々を巻き込み、やがて見えてくる新たな人生の地平線に向かって道を切り開いていくべきだ。

5 建設的な不満を持つ
「壊れていないものを直そうとするな」とはよく言われる。
これは近視眼的な考えだ。
あらゆる行動を改める必要はないが、自分のしていることをせめて時々は振り返って、どう変わったら私は向上できるのか、組織は改善されるのかと自問しない限り進歩はないだろう。
変化への努力を怠って、破壊的なかたちで不満を表すのではなく、新しいアイディア、手法、仕事への取り組み方に柔軟な受け入れの姿勢を持つべきだ。

6 日々新しい何かに挑戦する
「快適な場所」から追い出されても、私たちはできるだけ早く新しいそれを作ろうとする傾向がある。
古い壁を壊して、ただ新しい壁を作ることに何の意味があるだろうか?
毎日、変化に順応する新しい方法をせめて一つは試すことを自分に課して欲しい。
そうやって前向きで生産的な努力をすることだ。

7 情報を求める
変化に適応するいい方法を知っている人が職場の中にいるかもしれない。
助言や提案を求めるといい。
自分がうまく適応できるかどうかについても意見を求めよう。
変化の時期は橋をかけるときで、壁を作るときではない。
色々なインプットを求める時で、防衛的になってはならない。

アドバイスや提案を求める先は、職場の中だけではない。
情報共有のネットワークを広げることだ。


何があっても希望を失ってはいけない。
投げ出さず、進み続ける。
成功者のほとんどはこの方針を貫いてきた。
もちろん落胆することはあるだろう。
大事なのはそれを乗り越えることだ。
そうすれば世界はあなたのものだ。

               -デール・カーネギー-


恐れず変化と向き合う

変化を迫られると私たちはまず思う。
「変わりたくない」「変わる必要がない」「変われない」、あるいはただ「私は変わらない」と。
職場では、こういう態度の実例が毎日見れるし、変化の時期は蔓延する。
こうした姿勢は非生産的で、成功にも、自分の役割の認識にもつながらない。
変化に適応するには、このような、自分を停滞させる姿勢と対決する必要がある。
そして到来しつつある変化を喜んで受け入れられる柔軟な姿勢をもつことだ。


上手に変化を起こす6つのステップ


1 状況を分析する
提案された変化に伴う利益とリスクを徹底的に分析する。
・変えることによる潜在的な利益は何か
・コストはどれだけか
・変えることによるリスクは何か
・変えないことによるリスクは何か

2 プランを立てる
利益がリスクを上回ると判断されたら、実施のプランを立てる。
組織的な改革は、綿密で周到なプランがないせいで失敗することが非常に多い。
このプランづくりのステップが、最終的に成功するかどうかの決め手となる。

プランには次のような要素が含まれなければいけない。
・最も影響されやすい個人が受ける、変化の影響に対するプラン
・最も影響されやすい組織内のシステムが受ける、変化の影響に対するプラン
・変化を組織に融合させていく段階的なプラン

3 実施する
組織内の変化が一気にもたらされるか徐々に進められるかは、変化のタイプと周囲による。
レイオフや他部門との吸収や合併などは、事前の警告がほとんどないまま実施されることが多い。
一方、従業員の配置転換、組織再編、機器やシステムの更新などは、時間をかけて状況を見ながら行われることもある。
変化がこの段階にあるときにチームの最も重要な仕事は、正直でオープンな相互のコミュニケーションを保つことだ。

・一人ひとりの責任を明確に規定する
・変化を告知し、始動させる
・予定表に忠実に進める
・期待される変化の利益を宣伝する

4 結果を見直す
変化が実施されたら、その新しい仕組みやシステムの効果を監視しなければならない。
プランどおりに変化が展開するとか、変化に影響を受ける全ての人が予想通りに反応すると決め込んではいけない。
管理職の役割は、見直しのためのチェックポイントを設け、変化が期待通りの効果を上げているか、求められた結果を出しているかを観察することである

・結果を測定する方法を確立する
・結果が良好かどうか判断基準を共有する
・結果の収集、測定の手はずをととのえる
・見直しの間にも、チームの面たるメンバーに一貫して情報を提供する

5 変化を組織の基準に統合する
変化の結果をチェックして、プランどおりの成功をおさめていることが分れば、その変化は是とされて組織の新たな基準の一部となる。
見直しの作業は終了させず、新しいシステムと組織内の諸関連を引き続き監視する。

・この変化はプランどおりの成果をあげているか
・自分はこの新体制に十分に適応しているか
・期待に達していない変化はどの側面か
・それらの側面を成功させるについての自分の役割は何か

6 必要な調整をする
結果を見直して、プランどおりの成果があがっていないことが分ったら、実施の仕方を調整する必要がある。
状況分析とプランが的確だとすれば、組織内での考え方を調整して望ましい結果を達成する。

・結果がプランを下回るのはどこかをつきとめる
・適任者を必要な調整の判断にあたらせる
・全関係者のコミュニケーションを良好に保つ
・実施の仕方に加え評価のプロセスについても調整する


遠くまで行けた者は、たいてい自ら行きたいと思い、思い切って行ってみた者だ。
安全第一にしていたら、船は岸から離れられない。

                                -デール・カーネギー-   

         


職場の変化とスタッフの不安

組織が変化すると、その職場の全従業員が影響を受ける。
それぞれの身辺がどう変わるかを事前に通告しておけば、自分の仕事が変わるかといった不安が減るだろう。

■組織構造の変化
責任者や指揮系統の変化、社屋の移転、吸収や合併などの大規模な変革がこれにあたる。
従業員は居場所を失ったような感じや、居心地の悪さをおぼえることが多い。
この種の組織的な改革を率いるおきは、コミュニケーションと個人へのサポートが重要な要素になる。

■製品やサービスの追加・更新
サービスや品揃えが充実するのは組織にとって好ましい変化だが、生産、調達、在庫管理、保管、サービス、セールスなどに至る全従業員が大きな影響を受ける。
管理職はコミュニケーションの経路を全開にし、常に新しい情報に通じていなければならない。

■リーダーシップの変化
今日の職場では、どこでも昇進、異動、退職、レイオフ、そして組織再編といった変化が絶え間なく起きており、どの場合にも結果として管理職が交代する。
こうした変化の時期を管理するときの課題は、スタッフとの間に心の通う良好な人間関係をつくること、できるだけ早く信頼関係を築くことだ。

■新しいテクノロジーの導入
テクノロジーの加速度的な発展によって、個人もチームも変化についていくのが大変になっている。
個人はとくに、手も足もでないといった感じの無気力感を持つこともある。


変化を乗り切るリーダーの自己管理

職場のリーダーは、変化への適切な対応となることを期待される。
身辺の変化にどう反応するかを大勢の部下が見ているというわけだ。
もしも悩みやストレスを抱えたように見れば、スタッフの不安感は倍増するだろう。
行動と態度に自制心を失ってはならないことを肝に銘じて欲しい。

1 ネガティブな思考を避ける。
敵意、恐れが生じたときは、見方を変えて、これは自己成長の機会でありチャンスだと考える。

2 心配事や関心事を隠さない。
どういう考えや気持ちでいるかを周囲が理解できるようにする。

3 変化を首尾よく乗り切るという課題に対して現実的になる

4 問い合わせと調査を通じて情報を収集する。来る変化についてできるだけ知識を持つ。

5 目先の職務をできるだけ生産的に遂行する。
組織的業務、記録的業務に重点を置き、責任を他へ譲り渡す準備をする。
また自分の職務能力をいつでも証明できるようにしておく。

6 新しいアイディアにチャンスを与える。
新しい人間関係について性急な判断をしない。
柔軟で寛大な精神を保つ。

7 効果的なストレス対策を実行する。

8 必要に応じて新しい知識やスキルを身に付け、有能で柔軟なチームメンバーという印象を失わない。

9 カウンセラーやメンターなど、組織内の支援を利用することも考慮する。

10 変化を受け入れ促進することにリーダーとして尽力する。




スタッフに変化を受け入れさせる

変化の主要な部分が完了すれば、仕上げの段階になる。
新方式を固め、強化し、磨きをかけていく作戦を進めなければならない。
管理職やマネージャーは、その変化が職場に利益をもたらすからといって、スタッフが喜んで受け入れると決め込んではなrない。
抵抗に遭わない方が珍しいだろう。

変わることは次の5通りの恐れを伴うことが心理学で指摘されている。

1 未知の物への恐れ
慣れ親しんだ環境や行動など、よく知っているものに接している時に私たちは最も心が安らぐ。

2 失敗の恐れ
新しいことを試して、うまくいかなかったらどうなるかという不安。

3 束縛の恐れ
特定の目標に努力を集中させることへのためらい。

4 非難の恐れ
変化を起こすと、必ず誰かに非難される。
すっとこのやり方でやってきたのに、なぜ変えるのかと責められることが多い。

5 成功への恐れ
成功すると、人に妬まれたり、うぬぼれていると思われたりしないかという心配。

自分や家族、職場、会社の向上をはかるには、こうした恐れを乗り越えて、必要な変化を遂げる努力をしなければならない。
変化は次のようなステップがある。

■古きを捨てる
習慣や根付いた思考パターンを捨てるのは難しい。
生活パターンの中のそういう変化は、たいていは喪失の証とみなされる。
まさしく私たちは安全で馴染み深い環境を喪失し、不慣れで怖いところへ行こうとしているわけだ。
それは長年の同僚を失うことであったり、長く心血を注いできて自分の存在証明ともなっていた仕事を失うことであったり、大切な価値観を失うことであったりする。

しかしどんな喪失の時もそうであるように、古いものは手放さなければならない。
過去と別れることは容易ではない。
動揺し、心が乱れる。
心の底から揺さぶられることがある。
怒る人も、沈む人も、混乱する人もいるが、そのすべての感情に悲しんでからでないと、古いものを捨て新しいものを受け入れることができない人も多い。

■前進する
新しいやり方に馴染むのも容易ではない。
古いやり方と新しいやり方の間で身動きが取れなくなることもある。
変化をののしり、以前の安全で慣れ親しんだやり方に戻りたい、道の領域へ追い立てられるのは嫌だと嘆く声がしばしば聞こえてくるだろう。

人は変化の過程を通り抜けなければならない。
疑いと恐れを自分のペースで解消しながら。
これは自らの役割を定義し直し、仕事への意欲と取り組み方を新たにする時期だ。
新しい考え方や新しい選択肢を試すこともできるし、自己像を修正することもできる。
しかしエネルギーのいる混乱のときだ。


世間の偉業のほとんどは、まるで希望がないように見えたときでも、やってみることをやめなかった人々が成し遂げたものだ。
                                                    -デール・カーネギー-   


■適応する
やがて新しいやり方が古いそれに取って代わる。
いまや人々は変化の過程に柔軟になっている。
かつては拒絶された考え方や行動は今試されている。
その成功を目にするにつれ、新しい行動にはずみがついて自信が湧き始める。
より複雑な適応に進む用意もできている。

新しいアプローチ、手法、テクニックが、完全な受容への扉を開いていく。
かつてはエイリアンのようであり脅威だったものが、今や一つの生き方になっている。
人々は新しい文化に順応し、新しい働き方を採用している。
自己像を形成し直し、変化を遂げたことを誇りにしている。

■変化の完了
変化に終わりはあるのか?
変化が永遠に続いていくことに疑問の余地はない。
しかし変化の過程を意義深いものにするには、何らかのかたちで終点を決めておくべきだ。
開始の時点で、設定された目標に到達するにはどれくらいの期間がかかるかを判断する。
これは事態の複雑さによって1年以下の短い期間のこともあれば、数年に及ぶこともある。
期間の設定が短すぎると、主要な仕事はすまされ、調整も始まっているかもしれないが、真に文化を変えるような、耐久力ある変化は成し遂げられない。
逆に期間を長く取りすぎると、途中で情熱と決意が衰えることがある。






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