この記事を簡単に言うと

・シリアの化学兵器使用疑惑に対し、トルコ保健相より「サリンの使用確認」が発表された。
患者から採取した尿・血液から「サリンの代謝物が確認された」としている。

・1995年に起きた地下鉄サリン事件でも使用された“サリン”
有機リン系の神経ガスで、体内に入るとアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性部位に不可逆的に結合することで、AChEを失活させる。

・神経ガス“サリン”を浴びると、症状はすぐに出でる。
発汗、嘔気、嘔吐などの軽症をはじめ、呼吸困難、、昏睡、全身痙攣などの重傷例も。
最悪の場合は死に至る。

・神経ガス“サリン”を浴びてしまった場合、解毒薬は大日本住友製薬社の“パム静注500mg”が適応となる。
ただし、5時間以内に投与する必要がある。







シリアの化学兵器使用疑惑に対し米国が空爆を実施しましたが、トルコの保健相により「サリンの使用確認」がされました。
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サリン使用を確認=トルコ保健相 (時事通信)


以下は時事通信による報道となります。

トルコのメディアによると、アクダー保健相は11日、隣国シリア北西部イドリブ県で4日に起きた空爆に関し、トルコに搬送されたシリア人患者の検査で、猛毒の神経ガス、サリンの使用が確認されたと明らかにした。
患者から採取した尿・血液から「サリンの代謝物が確認された」としている。 



地下鉄サリン事件でも使用された“サリン”とは?

今回のシリア内戦で“サリン”が使用されたことが確定的になりました。

“サリン”と言えば、日本では1995年に起きた「地下鉄サリン事件」が有名です。
当時は乗客・駅員ら13名が犠牲となり、その他約6,300人が負傷したかなり大規模なテロでした。

さて、この“サリン”ですが、一体どういう化学物質なのか。


サリンの構造式
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サリンはリン(P)を含む有機リン系の化学物質です。
薬学や化学を専攻された方であれば分かると思いますが、有機化合物の中では簡単な構造。
簡単な化学物質ですが、合成は5段階。


サリン(有毒成分)合成方法
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サリンは熱や水で容易に分解する上、合成段階では極めて不安定になる性質を持ちます。
サリンの製造工程では様々な化学用機材や高度な脱水技術、上記で示した反応制御・精製技術・温度管理が必要であり、また多くの危険を伴う作業です。

“サリン”の人体への影響

サリンは体内の神経伝達物質であるアセチルコリンと似た構造を持ちます。
サリンはアセチルコリンを加水分解するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の活性部位に不可逆的に結合することで、AChEを失活させます。
それによりアセチルコリンの分解を阻害し、神経伝達を麻痺させることにより毒性が発現します。


アセチルコリン(神経伝達物質)の構造式
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サリンの毒性とは、神経物質の量を調整する酵素の働きを阻害し、神経物質をどんどん増やして神経を麻痺させることで発現します。
体の構造を破壊する、というよりは体内にある神経伝達物質を必要以上に増加させ、一気に蓄積させてマヒするという類の毒ガスです。

神経ガス“サリン”を浴びると、すぐに症状が出ます。



【サリンの毒性】

軽症

食欲不振、胸部圧迫感、発汗、嘔気、嘔吐、腹痛、下痢、倦怠感、不安感、頭痛、めまい

中等症

軽症の諸症状に加えて、視力減退、縮瞳、顔面蒼白、筋線維性痙縮、血圧上昇、徐脈、言語障害、興奮、錯乱状態


重症

失禁、縮瞳、気管支分泌液増加、湿性ラ音、肺水腫、呼吸困難、呼吸筋麻痺、意識混濁、昏睡、全身痙攣、体温上昇など
最悪の場合、死亡

サリンは殺傷能力が非常に強い毒ガスです。
吸収した量によっては数分で症状が現れます。
又、呼吸器系(肺)からだけでなく皮膚からも吸収されるため、ガスマスクだけでは対策が不十分です。

皮膚に一滴垂らすだけで確実に死に至る場合もあり、とても危険な化学物質となっています。

“サリン”を浴びた場合の治療法

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万が一、サリンによるテロに遭遇し、“サリン”を浴びてしまったら…

日本国内では、大日本住友製薬社の“パム静注500mg”が適応となっています。
ただ、サリン(毒ガス)がコリンエステラーゼに結合して一定時間が経つと、不可逆変化(エイジング)が起こり、解毒薬が効かなくなります。
サリンによる中毒を治療する場合、5時間以内に“パム”を投与しなければいけません。

“サリン”によるテロに遭遇した場合、治療は時間との戦いになります。
個人でできる対策は、不要な外出はなるべく避け、地下鉄などの密室性がある所には行かない、といったところでしょうか。

シリア、北朝鮮の情勢がひっ迫し始めている現在。
万が一の事態に遭遇した時の為に、事前にできる対策は打っておくべきと言えるでしょう。